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【理系社会人】ドイツ大学院受験を振り返ってみる【2019年秋入学】

理系社会人 ドイツ大学院受験 ドイツ大学院

本記事では、私のドイツの大学院受験を振り返ってみたいと思います。受験を考え始めてからのスケジュール、ドイツ大学院留学を決意するまでの経緯と当時の状況、出願準備、そして受験結果まで紹介していきます。社会人の海外大学院受験記録として参考にしていだだければと思います。

海外大学院留学に向けて最初にやるべきことについての記事はこちら↓

留学が決まったら…日本から持って行った方がいいものについての記事はこちら↓

受験全体のスケジュール

2018年4月ドイツ出張にてドイツ大学院進学を志す
2018年5月-7月留学全般とドイツの大学院について情報収集
2018年8月受験を決意。大まかな出願先候補を選定。
IELTS受験開始(2019年3月まで受け続けます)
2018年11月出願書類準備開始(各種発行申請、推薦状の依頼など)
ドイツ語資格(Goethe-Zertifikat A1) 受験
2018年12月-2019年2月出願書類作成(CV・Motivation Letterなど)
2019年2月-3月出願
2019年4月ベルリン工科大学から合格通知
2019年10月入学

ドイツ大学院受験を決意するまで

留学を考え始める以前の経歴についてはこちらをご覧ください。

ドイツ留学を考え始めたきっかけ

直接的なきっかけは妻にドイツ勤務の可能性が浮上したことでした。元々、仕事に関連して生産マネジメントの分野に興味があり、研究が盛んな欧米の大学院でちゃんと勉強してみたい気持ちが少しだけあったので、一緒にドイツに行って大学院に行くのもありかもしれないと考え始めました。

そんな中、2018年4月にドイツ出張の機会がありました。ハノーバーメッセという世界最大の産業見本市に参加することになったのです。そこで目の当たりにしたのはインダストリー4.0に代表されるドイツでの生産マネジメント分野の最先端のプロジェクトの数々で、何より驚いたのは技術面の話ではなく、それらのプロジェクトが産官学の密な連携によって推し進められていることでした。関連してドイツでは産業界と学界の距離感が近く、人材の流動性も高いことが分かってきて、更にプロジェクトには当然大学院生たちが多数参加していたことから、自分もこんな環境に身を置きたいという気持ちが急激に高まりました。これがドイツ大学院進学を志した瞬間でした。

海外留学全般の情報収集

気持ちは完全に大学院進学に決まっていたのですが、留学についてほとんど知らない状況だったので、とにかく調べる必要がありました。

最初に海外大学院進学についての概要を知るのに「最新版 大学院留学のすべて 入学後絶対後悔しないための10のステップ」が役立ちました。

今どきWebを探せばいくらでも情報は得られるかもしれませんが、概要をサクッと知るにはこの1冊を読めば済むので、情報収集のスタートにおすすめです。この本のおかげで、大学院留学に向けて何をすれば良いかが明確になりました。具体的には、入試は書類選考のみのところが多いため、語学要件のための語学試験のスコア取ることと出願書類の準備が主な作業であることが分かりました。そして、

  • 語学試験のスコアは高得点は必要なく、要件を満たしていればよい
  • 成績が悪くても他の要素で十分挽回できる可能性がある

という趣旨のことが書いてあり、大いに励まされました。

ニム
ニム

学部の成績が悪く、語学も要件を満たすので精一杯でしたが、なんとか合格できました!

ドイツの大学院入試についての情報収集

生産マネジメント系の英語開講コースを探す

ドイツの大学院に関しては、まず大前提として

  • 志望する分野(生産マネジメント)
  • 英語で開講されている

という2点を満たすコースを探すことから始まりました。(主にはDAAD:ドイツ学術交流会の検索サイトを使いました。リンクが切れていたら「DAAD international programmes」で検索してみてください。)英語開講と限定したのは、現役大学生ならいざ知らず、アラサー社会人でドイツ語能力ゼロの状態からドイツ語で修士課程に進むのにはまず入学までに時間がかかると踏んだからです。調べてみると英語開講のコースは工学系だと主に情報系や環境系専攻が多かったのですが、まさに志望通りの生産マネジメント系の英語コースが複数ありました。それらのコースは出願要件に職務経験も課しているところがあり、その点は成績の悪い私にとっては好都合でした。

注意点①:専攻と一致する履修科目

ドイツで大学院進学を考える場合、一般的に出願条件として、学部での履修科目がその専攻と関連している必要があり、〇〇の分野でXX単位以上取得していること、といった具合に厳しく設定されている専攻もよくあります。私の卒業した学科は機械工学・電気電子工学・物理学の3学科が統合してできた学科で、広く浅く履修してしまっていたために、こうした条件を厳格に定めているコースには出願できなかったりしました。志望した生産マネジメント系のコースはちょうどこの条件が緩いところもあったので出願を諦めずに済みました。しかし、後で改めて言及しますが、不合格だったコースの中には履修科目の要件を満たしていなかったために不合格になったところもありました。

ニム
ニム

最近流行りの学際系、教養系の学部学科出身の方は要注意です。

注意点②:学費(授業料)

もし私の情報を参考にしようとしている方には特に注意していただきたいのが、学費についてです。ドイツの大学院は学費としては学期ごと10万円もかからないくらいの在籍料のみの負担で、授業料がかからないのが一般的です。(州によっては留学生に授業料を科すところもあります)しかし、ドイツでは数少ない私立大学や、公立大学であっても一部のコースでは授業料がかかります。残念なことに、私が志望した生産マネジメント系のコースは授業料を科すところが多く、私が進学したところも修士の2年間で200万円ほどかかります。

ニム
ニム

公立大学でも社会人向けや留学生向けのプログラムは授業料を取る傾向にある印象です。

受験を決意!

志望校が固まってきたところで各大学の出願要件や方法も分かったので、ここでようやくドイツ大学院進学が実現可能だと思えるようになりました。前後して妻のドイツ勤務も固まってきたので、出願に向けた準備を開始しました。

出願準備

最初に注意点ですが、ドイツの大学院・大学受験では留学生向けのUni-Assistという大学共通のプラットフォーム経由で出願するところが多いのですが、私は登録だけしたものの、使用することはありませんでした。更に、出願書類について「コピー認証」というドイツ独自の手続きが必要なことが一般的ですが、こちらについても、私の場合はたまたま必要ありませんでした。以下、これらについては触れませんのでご留意ください。

語学要件を満たすための準備

英語(IELTS)2018年8月〜2019年3月

英語の語学要件としては様々な語学資格が有効でしたが、メジャーなのはTOEFLとIELTSだと思います。私は、受験料が若干安かったのとTOEFLの出題形式に少し苦手意識があったので、IELTSを選択しました。多くの大学院では英語開講コースの入学要件としてIELTS overallスコア 6.5を課しているところが多かったです。

結果としてはこのoverall 6.5というスコアを大学院の出願締切のギリギリに取得することができたのですが、私の例は反面教師として見ていただきたいと思います。というのも目標スコアを取得するまで10回近く受験し、しかも苦手なスピーキングが最後まで全然伸びなかったからです。本来であれば集中して勉強して、数回の受験で取るべきものと思いますし、実際そのつもりで最初の数回は期間を空けて受けていました。しかし、点数がなかなか伸びず、大学院の出願締切が迫った最後の方は数打ちゃ当たるの精神で2週連続で受けたりしました。結果としてはそのおかげで目標スコアに届いたのですが、これは甘い見通しの計画と純粋な勉強不足がゆえの結果なので、褒められたものでは無いです。

ニム
ニム

途中から出願書類準備と並行することになり、ますます勉強計画が破綻していました…本当に間に合って良かったと思います。

参考までに、2018年8月に受けた時の最初のスコアと初めて目標スコアを取得した2019年2月のスコア(2週連続の1週目でした笑)を紹介します。

受験日ListeningReadingWritingSpeakingOverall
2018/08/186.56.54.04.55.5
2019/02/236.58.06.04.56.5
ニム
ニム

あれ?リスニングも伸びてませんでした…

ボロボロのIELTS対策でしたが、使用した参考書などは以下記事に記載しています。

ドイツ語(Goethe-Zertifikat A1)2018年11月

出願先は全て英語開講のコースなのでドイツ語の語学資格は必須では無かったのですが、いくつかのコースではあれば加点されることになっていました。日本だけで開催されている独検は資格として認められるか不明だったので、ドイツの公的資格でかつ日本で受験可能なゲーテインスティテュートの資格(Goethe-Zertifikat)の一番初級レベルのA1を受験することにしました。

実はドイツ出張の後から少しずつドイツ語の勉強を開始ししていたものの、IELTSの勉強を優先していたのでほとんど手付かずな時期もありました。試験の2週間くらい前から集中的に勉強して、なんとか合格しました。

ニム
ニム

当時はA1のレベルに全然達していなかったと思いますが、試験に特化して勉強すれば意外と点は取れました!

ドイツの大学院の英語開講コースは、英語圏の大学院を目指している受験生も併願してくるので、要件になくても差別化のためにドイツ語資格は取得しておいた方が良いです。

参考までにGoethe A1試験対策に使用した教材はこちらです。

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Klett社の「Mit Erfolg zu」シリーズは模擬試験形式で複数回分問題が掲載されているTestbuchと、該当レベルの語彙・文法演習や出題形式の説明、若干の試験対策問題が掲載されたUbungsbuchの2種類ありますが、Goethe A1レベルについては後者のUbungsbuchをお勧めします。タイトルにA1/A2とある通りA2レベルまでカバーしていて、この一冊で試験対策のみならずドイツ語の基礎ドリルとしてもしばらく使えるのでお得です。

ちなみに、本格的にドイツ語学習には個人的に電子辞書は必須だと思います。長く使えるので、ドイツ語に取り組み始めたらすぐ手に入れましょう。

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出願書類の準備(語学以外)

CV

日本でいうところの履歴書にあたる書類です。書き方に関してはネット上にいくらでも参考にできる情報がありますが、EUROPASSというEUが提供しているプラットフォームをとある大学が推奨していたのでそれを使用しました。EUROPASSでは既定のフォーマットに基づいてCVをWeb上で作成・編集することができます。特にこだわりがなければ、フォーマットを探したり自分で作ったりするよりも時間の節約になるので良い選択だと思いました。

Motivation Letter

いわゆる志望理由書です。大学の成績と経歴は変えられないので、ここでのアピールが出願準備の時点で合否を左右できるほぼ唯一のポイントです。他にも推薦状がありますが、Motivation Letterの内容と連動してアピールすることになると思います。私のMotivation Letterは以下の構成(段落)で作成しました。

  • Introductionとして、興味のある分野と進学を志した理由
  • なぜドイツ、なぜその大学、なぜそのコースが良いのか?
  • 大学での専攻、職務経験とキャリアゴールについて

本来はConclusionも書くべきとは思いますが、A4一枚に収めるためにやむなくこうなりました。A4一枚という制約があったわけではないのですが、いくつかのサイトにMotivation Letterは短ければ短いほど良いという趣旨のことが書いてあったので、A4一枚に収めると自主的に決めました。ちなみに私が合格したコースは1900通ほどの出願があったらしく、審査をする人の心情を考えると、A4一枚が適切かどうかはともかく、短い方が良いのは確かなような気がします。

出願に使用したMotivation Letterの内容について下記note記事(有料100円)にて公開中です↓

【ドイツ大学院受験】ベルリン工科大学に合格した出願書類(Motivation Letter)を公開します【理系社会人】|ニム
はじめに 2019年秋入学のドイツ大学院受験において、ベルリン工科大学の英語開講の修士コース、Global Production Engineering(以下、GPE)に合格しました。本記事ではベルリン工科大学GPEの出願に使用した書類につ...

GRE (不使用)

GRE(Graduate Record Examination)とはアメリカとカナダの大学院受験における共通試験のようなものですが、出願先のうち1校だけ出願要件として課していました。3回受験しても要件の基準には全く届かずに諦めていたところ、なんと出願期限1ヶ月前になって要件から撤回されて不必要になりました。

ニム
ニム

こんな経緯なのでGREについて多くは語れませんが、とにかく語彙が難しかったのが印象に残っています。

推薦状

大抵の出願先で2通以上の提出が課されていたため、大学・大学院時代の指導教官と会社の上司にお願いしました。お二方とも快く引き受けてくれて非常にありがたかったです。こちらの負荷としてはフォーマットについてとアピールしたい要点をある程度伝えたのみでした。アピールしたいけどMotivation Letterに自分で書くのは気が引ける、という点については特に言及するようにお願いしました。

ニム
ニム

Motivation Letterを補足する意味合いもあり、提出が求められていないコースでも提出しました!笑

職務経験証明書

職務経験が入学要件に含まれる一部の出願先で提出が課されていました。会社には該当する既定の証明書がなかったのですが、上司経由で人事部に相談して、発行してもらうことができました。

卒業・修了証明書/成績証明書(英文)

母校が家から近かったので直接赴き、発行申請しました。その場で発行はされないので、受け取りは郵送での送付を依頼しました。英語の科目名が日本語と結構違っていたりして面白かったです。

出願時のステータス

ここで出願時の私のステータスについて紹介しておきます。これらが主にCVに記載した情報になります。

  • 学歴:上智大学理工学部卒業(GPA 2.41)、同大学院理工学研究科修了(GPA 3.60)
  • 職歴:某大手メーカー勤務(エンジニアリング部門 1年→IT系の研究開発部門 ●年)
  • スキル:プログラミングなど仕事に関する諸々とMS Office
  • 資格:基本情報技術者、応用情報技術者
  • 英語:IELTS overall 6.5
  • ドイツ語:Goethe-Zertifikat A1
ニム
ニム

GPAはCVに載せていません笑

資格は海外では通用しないと思いますが、とりあえず載せるだけ載せました。

出願先と受験結果

出願先の選定の詳細については割愛しますが、妻の勤務先候補など色々と条件を考えた結果、最終的に以下のコースに出願しました。

出願期限大学コース出願日合否
3/1RWTH Aachen(アーヘン工科大学)International Academy – Production Systems Engineering2/28×
3/1RWTH Aachen(アーヘン工科大学)International Academy – Management and Engineering in Production Systems2/28×
3/31Technische Universität Berlin(ベルリン工科大学)Global Production Engineering3/17
3/31Hochschule Darmstadt(ダルムシュタット応用科学大学)Electrical Engineering and Information Technology3/21×

それでは各校の入試について振り返ってみたいと思います。

RWTH Aachen(アーヘン工科大学)

International Academyという留学生向けプログラムを提供している学内機関に、生産マネジメントを学べるコースとしてはProduction Systems Engineering(2020年現在はコースが改定されてNetworked Production Engineering)とManagement and Engineering in Production Systemsがありました。

併願が可能だったので両方出願しましたが、どちらもダメでした。こちらのコースは学部での履修科目の要件が設定されていて、その要件を満たさないことが理由として不合格通知に記載されていました。自己評価では大丈夫かと思っていたのですが、どれかの科目が認められなかったのかもしれません。

ニム
ニム

これについては事前に問い合わせて確認しておくべきでした。

Technische Universität Berlin(ベルリン工科大学)

ベルリン工科大学には学内研究所であるIWF (Institut für Werkzeugmaschinen und Fabrikbetrieb: 工作機械及び工場マネジメント研究所)が設立したGlobal Production Engineering(GPE)がありました。こちらに合格し、進学することになります。

3月31日の出願締切に対して、合格通知は4月下旬から数回に分けて段階的に送られてくるようになっていて、評価ごとに合格者をグループに分けて、評価の高いグループから順番に受け取るようになっていました。合格通知を受け取ったら初回の学費の請求がくるので、そこで支払いの意思を見せなければ合格の権利を失うという仕組みでした。

ちなみに、私は4月26日に合格通知を受け取ったのでGPE的には評価が高かったようです。どの要素がどれだけ評価されたのかは不明ですが、有利に働いた条件として一つ考えられるのは、私がおそらく唯一の日本人出願者だったということです。これは日本だからすごい、ということではなく、単純に日本からの出願が珍しいからです。コースの多様性の観点からプラスに評価されたと思います。

ニム
ニム

これはドイツの大学・大学院入試全般に言える話だと思うので、日本人の皆さんは是非ドイツ留学を検討してみてください。

また、入学してから聞いた情報ですが、2019年入学の入試では70名の定員に対し1900人ほどの出願者があったようです。

ニム
ニム

倍率エグすぎですね…知らぬが仏でした笑

Hochschule Darmstadt(ダルムシュタット応用科学大学)

こちらにはElectrical Engineering and Information Technologyという英語開講の国際プログラムがあります。厳密には生産マネジメントは学べないのですが、関連する分野が学べるので出願しました。

結果は不合格だったのですが、理由は何と「既に修士号を持っているから」でした。それなら最初から要件に書いておいてよ!と脱力してしまいました。

ニム
ニム

私みたいなケースは想定されてなかったんですかね〜

終わりに

振り返ってみると、なかなか綱渡りな受験でした。英語のスコアがギリギリまで取れませんでしたし、合格したベルリン工科大以外はどこもどうしようも無さそうな理由で落ちています。また、受験してみた感想としては、どのくらい受かる望みがあるのか全く読めないのが難しいところだと思いました。私の場合は妻の仕事との兼ね合いでどうしようもなかったのですが、もし受験を考えている方がいらしたら、出願先はもっと増やすことをオススメします。

以上、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

もしコメント等ありましたらTwitterでDMいただければと思います。

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