某SNSで子の進路について語る親御さんたちのポストを見ていると、たまに出てくる話が「理系の就職といえば教授のコネで就職」というイメージだ。そして、それが理系のメリットと見る向きが感じられる。
しかし、僕の個人的な実感からすると、よっぽどの人気企業のコネがない限りは教授のコネとはそんなに魅力的なものでもない。もしかすると人気企業へは特別なコネがないと就職はなかなかできない、というイメージがあるのかもしれないが、優秀な人は別にコネなんて使わなくても(学校推薦は使うとしても)人気企業に就職することができる。そんな状況で、そこまで志望度の高くない会社へ教授のコネを使って入ろうという気はなかなか起きないだろう。
では教授のコネが有難い場面はいつかというと、それは就活に苦戦した時ではないかと思う。昔話ではあるが、僕は面接が大の苦手で就活はなかなか苦労した。そんな時に指導教官が電機大手某社とかインフラ大手某社とかへの紹介の話を持ってきてくれた。そうこうしているうちに志望していた会社から内定が出たのでお世話にならずに済んだが、下手したら無い内定にもなりかねない状況で、大手企業への就職の選択肢を提示してもらえたというのは恵まれた環境だったと思う。
つまり、理系の就職といえば教授のコネで就職、というイメージは全くの間違いということではないが、内実はちょっとイメージと違うのではないかと思っている。僕のような「就活弱者」にとってはそれなりにありがたい話だったのだが、優秀な人にとっては全く意味をなさないことが多いのではないだろうか。
さて、僕の昔話は学内では比較的就職に強いと評判だった研究室1での話であり、理系全般で一般化できる話ではないという点は留意が必要だ。例えば隣の研究室だったら同様の話が出たかどうかは定かではない。
話が変わるが、ここで一つ指摘しておきたいのは、就活の結果に及ぼす要素として、大学名よりも学内のどの研究室所属かという点が実は大きなファクターではないかということだ。
ここで、いわゆる「理系が強い」大学ほど教授が持つコネが強い/多い(逆にそうでない大学はコネが弱い/少ない)というイメージを持っている人がいるかもしれない。私はそのイメージを検証することはできないが、いわゆる「理系が弱い」と言われがちな大学の理工学部を出た身として、「弱い」大学に強いコネが普通に存在するということは確実に言える。
世の中には大学間の違いにこだわる人が多く、文系就職においてはそれが正しい戦略なのかもしれないが、こと理系就職という観点ではそこにこだわる意味はあまりないように思える。入学後の研究室選びの方が大事ではないか。そして、希望する研究室に入るには大抵は高成績が必要だ2。大学受験でより高みを目指すのは結構なことだが、受験がうまくいったからといって油断はできないし、失敗したからといって悲観することもない。大学入学後こそ高みを目指して頑張ってほしい。